第3ラウンド VS真昼

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 通話がどんどん終わりに近づいていくのが分かる。そりゃそうだ。あたしたちは、年明けの瞬間に通話をつないでいるような仲じゃない。  そんな冷静な思考とは裏腹に、「うぅん」とか「まぁ」とか無意味な言葉で会話を引き伸ばしてしまう自分がいる。  居心地が悪く、あたしはその場で座り直した。 「……じゃあ、また」 『ああ、またな』  通話終了ボタンを押すのが少し寂しく感じられるのは、これからひとりぼっちで眠るからか、それとも、また真昼とうまく話せなくなってしまうのが怖いからか。  ひとりで作ってひとりで食べる予定の作りかけの栗きんとんが目に入った。 「待って」  気づいたら真昼をそう引き止めていた。 『なんだ?』 「くっ、栗きんとん! 真昼、栗きんとん好き!? 作りすぎたから、よかったら食べない?」  真昼が沈黙する。あたしは後悔でいっぱいになってその場でのたうちまわった。  距離を置いているような相手から手作りの栗きんとんを食べないかといきなり言われても困るだけだろう。この沈黙も、断る文句を考えているに違いない。 「やっぱり、なんでもな……」 『食べる』  予想に反し、真昼は短くそう答えた。  それからあたしたちは明日学校近くの神社で会う約束をして、今度こそ本当に電話を切った。 「うわぁ、何やってんだろあたし」  スマホも残りの裏ごし作業も投げ出し、あたしは畳に寝そべった。  どうしてこんなことを言い出してしまったのか自分でもわからない。  しいていうなら、カッとなって、だろうか?
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