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あたしは突然お腹が痛くなったことにしようと決意し、回れ右の体勢に入る。しかし、実行するより一瞬早く旭さんと目が合ってしまった。
「ピィちゃん! あけおめー!」
旭さんがあたしに手を振ると、まわりにいた女性たちがぎろりと睨んでくる。おそらく彼女たちは三兄弟に声をかけようとハイエナのように機会をうかがっていたに違いない。
ともすれば刺されそうな雰囲気に、だから帰りたいと思ったのだとあたしは心の中で地団駄を踏んだ。
「ごめんピィ子。出かける間際に捕まって……」
げっそりしている真昼に、両脇から兄弟ふたりが絡みついた。
「もー。ふたりで初詣に行くなんてお兄ちゃん聞いてないよ~」
「真昼兄さんってば水臭いな~」
あたしはついに覚悟を決めて、ため息をついた。
真昼とふたりで行ったところで会話が持つ気がしなかったから、正直に言えば、旭さんたちが来てくれて助かったとさえ思っていた。
「……行きますか、四人で」
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