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それからあたしたちは徒歩で神社に向かった。
学校のある丘のふもとには大きな神社がある。安産祈願から縁切りまで幅広く行っているいわゆるビジネス神社なので、境内はいろんな願いをもった人たちでごった返していた。
三兄弟はというと、そんな何でも屋の寛大な神様もびっくりしそうなくらいの自由行動を繰り広げていた。
毎年大吉が出るまでおみくじを引き続けるというおみくじガチ勢の旭さんと、寒いから神社の隣の甘味処で暖をとりたい夕仁くんと、神社に来たらまずは参拝するべきだという真昼で意見が合わず、誰も譲る気がなかったので三手に分かれることになったのだ。
誰についていくか迷っているうちに旭さんと夕仁くんは行動を開始し、気づいたらあたしは真昼とふたりで取り残されていた。気まずいことこのうえないが、参拝したかったのも事実だった。
列に並んで待ち、お賽銭の五円を入れて手を合わせる。
お父さんが早く良くなりますように。バイトをクビになりませんように。来年は三年生なのですんなりと進路が決まりますように。
それから、真昼の態度が元通りになりますように。
「ピィ子、五円でどんだけお祈りしてんだよ。がめついな」
隣の真昼が肘でつっついてくる。
「そう言う真昼は五百円も入れていったいどんなたいそうなお願い事したわけ? 世界平和?」
「うるさい。こういうのは言ったら叶わないんだよ」
どうせ大した願い事じゃないに違いない。
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