第3ラウンド VS真昼

14/51

122人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
 それぞれの用事が終わったら合流することになっていたので、あたしと真昼は神社の裏手の林に向かった。  神社には表側に第一駐車場、裏側に第二駐車場がある。さすがビジネス神社だ。林の手前、駐車場の脇にはご丁寧にも待合所のようにベンチが置かれていた。  真昼が途中の屋台で小さなりんご飴をひとつ買ってあたしに差し出してくる。 「栗きんとんのお礼」  少し迷ってから、あたしはリュックサックの中に入れておいた栗きんとんのタッパーと引換にそれを受け取った。  真昼がベンチに腰をおろし、タッパーを開く。一緒に渡した使い捨てスプーンで山盛りの栗きんとんをすくいあげ、真昼はそれを頬ばった。 「おいしい。栗とさつまいもだ」 「そりゃ栗きんとんだもの。じゃがいもとハムだったらポテトサラダになっちゃうでしょ」  どうしてあたしはこんなにかわいくないことばかり言ってしまうのだろう。  真昼の口からそれ以上の感想はなかった。そのかわりに真昼はあっという間に栗きんとんを平らげた。気持ちいいくらいの食べっぷりだ。 「タッパー洗って返すよ。タッパーは割る心配ないから俺にだって洗えるはず」 「いいよ別に。食べきれないのは本当だったから助かった」  あたしは真昼から人ふたり分の距離をあけてベンチに座った。先ほどもらったりんご飴の包装紙を破いてかじりつく。口の中に甘ったるい飴と酸っぱいりんごの味が広がる。普段滅多にりんご飴なんて食べないから、やけにおいしく感じられた。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加