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「一晩中看病してくれたこと、最初はピィ子が俺に惚れてるからだと思ってたけど違った。じゃあどうして? ってずっと不思議だった。でもこのことを思い出したとき、俺は納得のいく答えを見つけた」
「そのこころは?」
「ピィ子も同じようなことを言った経験があるんじゃないか?」
あたしはとっさに答えることができなかった。
あの日泊まりこみで看病をしたのは、寂しそうな真昼に引き止められたから、だけではない。真昼の瞳の中に、「行かないで、ママ」と叫んでいる幼いあたしが見えたからだった。
風が真昼のふわふわの黒髪をふきあげ、幼げなまるいおでこをあらわにした。
「確かに最初は雛鳥の刷り込みだったんだ。でも、ピィ子に説教されたり静岡に泊まったり夕仁への嫉妬で頭ん中ぐちゃぐちゃになったりしてるうちに、好きが育っていった」
「その結果がこれ?」
「そう。ピィ子にとってバイトが一番大事なら、俺はピィ子の大事なものを大事にする。要するに、ピィ子が俺を好きになるまで長期戦を覚悟したってことだ」
真昼はまるで壊れ物でも扱うかのようにあたしの手首をそっとあたしの膝の上に戻した。
「俺は今後常に一流のバレー選手でいるから、ピィ子はいやでも俺を見失わないはずだ。だからピィ子の心の準備ができたときにいつでも俺を好きになれよ。それまで俺はどこにも行かないって約束する」
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