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ぐっと喉が鳴り、あたしは慌ててうつむいた。りんご飴が視界に入る。
あたしの心は食べかけのりんご飴だった。むきだしになった白い果肉みたいな、心の中で一番弱って柔らかい部分に、真昼の言葉がまっすぐに刺さっていた。飴にコーティングされている部分だったらどんな言葉だって跳ね返せていたのにそこだけはダメだった。
あたしはりんご飴に口をつける。むき出しの果肉に歯を立てて、下の歯で飴をかじった。
失って困るものならほどほどに好きでいるべきだと思ってきた。でもどんな理屈をとってつけたところで、結局あたしは好きになったものが離れていくことを恐れていただけだ。
そうやって「好き」を遠ざけて強くなった気がしていただけで、本質的には傷ついた七歳のあたしから何も変わっていないのだ。
変だ。りんご飴がしょっぱい。
真昼が立ち上がってあたしの正面に立った。
「泣くなよピィ子。俺、慰め方がわからない」
「泣いてないし」
あたしはニットの袖を引っ張って頬を拭ってから、近づいて来る真昼のお腹を押し返した。
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