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しばらくおのおのポテリングを食べる音だけが響き渡っていたが、やがて、旭さんが心底不思議そうに首をかしげた。
「なんで? 両思いなら付き合うよね?」
「そうですよ。昨日は機会を逃しちゃっただけなら、ここで決意表明したらどうですか? 僕、神父やるんで」
夕仁くんがありもしない聖書を開くまねをして、「ヤメルトキモスコヤカナルトキモ」とぶつぶつ呟いている。
真昼は神妙な顔であたしの手を取ると、あたしの左手の薬指に無理やりポテリングを押しこんだ。
「いいもんだなこういうの」
真昼が無邪気な笑みを向けてくるので、あたしは毒気が抜かれてテーブルに頬杖をついた。
「なあ、俺とピィ子が付き合うためにはどうしたらいいと思う?」
「ピィちゃんに付き合ってって言ってオーケーされたら終わりじゃないの?」
「もし内緒で付き合って母さんにバレたら即解雇だろ。それはピィ子が困る」
三兄弟は腕を組んで神妙に考えこんでいる。
ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。
ふいに夕仁くんが手を叩いた。
「真剣交際であることを母さんに話して認めてもらうしかないのでは?」
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