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「ただいま息子ども! と、あら、家政婦さん?」
勢いよくリビングに入ってきたのは、三兄弟のお母様だった。背筋がまっすぐに伸びているから、ジャージを着ているのにまるで高いスーツを身にまとっているかのようにパリッとして見える。
そういえば一月一日から春高が終わるまで帰省するって旭さんが言っていたっけ。
あたしは慌てて立ち上がってお辞儀した。
「あけましておめでとうございます! す、すみませんお正月から! 帰ります!」
お母様はくすっと笑って、ジャージの上に羽織っていた真っ赤なウィンドブレーカーをダイニングテーブルの椅子の背にかけた。
「いいのよ。どうせ旭に無理やり連れてこられたんでしょう?」
「ひどいな母さんは。おれだけじゃないのに」
「ふうん。その様子じゃ、まだ旭と付き合ってないのね。安心した」
「母さん、そのことなんだけど」
真昼が何かを言おうとするので、あたしはお母様に見えないような位置から真昼の足を思いっきり踏みつけた。バレたら解雇だというのにいったい何を言おうとしているのだ。
「何すんだよピィ子」
「何もしてないけど、何か?」
「家政婦さん、出勤日じゃないのに悪いんだけど、お茶を入れてくれる? 駅からジョギングがてら走ってきたからちょっと喉が渇いたのよ」
「わかりました」
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