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あたしはお母様にお茶をお出しすべくキッチンに向かった。緑茶を入れて湯呑をお母様の前に差し出すと、お母様はにっこりとあたしに微笑んだ。
「薬指にポテリングがはまってるわよ?」
「し、失礼しましたっ」
あたしは慌ててポテリングを外しにかかる。
しかしポテリングは左手薬指の第二関節を過ぎたあたりで止まっていて、それ以上先にも進まないし後にも戻らない。押して割ろうにもあたしの指にフィットしているためうまくいかない。
しばしあたしが奮闘していると、真昼が隣から手を伸ばしてきた。
「俺がやってやるよ」
しかしその手がぴたっと止まる。見れば、真昼は頬をほんのりと染めていた。
「どうしたの?」
「初めての共同作業だと思って」
「そんなこと言ってる場合!? いいからここ持って。あたしが指引き抜くから」
それから五分後、旭さんがニヤニヤしながら「ずっと思ってたんだけど、水でふやかしてとれば?」とアドバイスをくれたため、あたしは無事にポテリングの呪縛から放たれた。五分前に言ってほしかった。
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