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綺麗に手を洗ってお母様のもとに戻ると、真昼はお母様の前に正座させられていた。
「左手薬指のポテリングに、初めての共同作業。どういう意味か説明してもらえる?」
真昼は微妙にお母様の顔から視線をそらして答えた。
「特に深い意味はない」
「まさか旭じゃなくて真昼が家政婦さんと付き合ってるってことじゃないでしょうね?」
「付き合ってはいない」
真昼はきっぱりと答えた。グッジョブ、と一瞬心の中で親指を立てたが、やっぱり真昼がそこで口を閉ざすわけがなかった。
「付き合ってはいないけど、好きだから付き合いたいと思っている」
「なら」
「でも彼女をクビにしないでほしい」
「あなた今、自分がどれだけワガママなこと言ってるかわかってる? そういう一丁前な口は春高でベスト4にでも入ってから言いなさい。インターハイでのあの負けを忘れたの?」
「じゃあベスト4に入れたら俺たちの関係を認めてくれるのか?」
頑なな真昼の様子に、お母様は深いため息をついた。
「入ってから言いなさい。ただね、ちゃんと高橋さんの気持ちも確かめてね」
「その点は大丈夫だ」
「いい? 高橋さんが嫌だって断ったならあんたがどんなに好きでもダメなのよ?」
お母様はもう一度念を押すと、それ以上は追求しなかった。案外あっさりと認められてあたしは拍子抜けした。
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