第3ラウンド VS真昼

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 それから丸二日、真昼関係の連絡は途絶えなかったが、あたしはそれを門前払いし続けた。  さらに翌日、一月五日は、あたしの新年初家政婦バイトの日だった。  いつものように真鍋家に向かうと、玄関のホワイトボードの真昼の予定欄に「春高一回戦」と書かれていて、胸がつきんと痛んだ。  それでも傷ついているわけにはいかない。春高バレーが終わるまで家にいるというお母様にお茶をお出ししたり、あたしが年末休みをとっていたために散らかってしまった家の中を片付けたりとやることは山積みだった。  真鍋家で家政婦のアルバイトをするようになって半年。あたしはほとんど洗濯の失敗をすることがなくなっていた。  旭さんは洗濯に注意が必要な服を着ることが多く、夕仁くんはポケットに物を入れっぱなしにする癖が治らない。どんな服であれ、そのふたつだけは絶対に確認するようにしていた。  もちろん真昼のジャージの上着のポケットも同じように手を突っ込んで確認する。  何もないだろうと思っていたが、指先が何かに触れてかさりと音がした。もしかしたらラブレターかもしれない。文化祭前にもそういうことがあった。  ポケットから引っ張り出すと、それは端っこがくしゃくしゃになった一枚の封筒で、表には汚い字で「ピィ子へ」と書かれていた。真昼からのものだろうか。  一瞬、捨ててしまおうかと思った。  でもさすがに実行する勇気は出なくて、あたしはその封筒を自分のポケットにしまったのだった。
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