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家政婦バイトの仕事が終わって、帰りの電車で、あたしはその手紙を読むことにした。
電車はこれから帰る人たちで混みあっていて、あたしはドア際に立っていた。目の前を夜の町が流れていくのを見ているとたまらなくセンチメンタルな気分になる。
封を閉じていた透明なセロハンテープをはがし、隣の人に読まれないようにそっと手紙を開く。「背景 ピィ子へ」という誤字が真っ先に目に飛びこんできた。間違いなく真昼からの手紙だ。
『この手紙がピィ子にちゃんと届くといいと思う。
一月七日に、春高の三回戦と準々決勝がある。七日はテストだから午前中で学校が終わるはずだろ。
チケットを同封しておいたから、応援にきてほしい』
字は罫線をまるっきり無視しており、一枚目はそこで終わっていた。あたしはその後ろの二枚目を手前に持ってくる。
『じめだ』
手紙はそんな中途半端なところから始まり、そこで終わっていた。けじめだ、と書きたかったのだろうか。
その他には一枚目にあったとおり、春高のチケットが同封されていた。
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