第3ラウンド VS真昼

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 その日の仕事がすべて終わったのは、三時過ぎのことだった。  玄関で靴を履いていたら、今日はずっと二階にこもっていたはずの旭さんと夕仁くんが抜き足差し足で階段をおりてきた。その手には、お母様が持っていたのと似たようなタブレット端末が握られている。 「ピィちゃん」 「ピィ先輩」 「お疲れ様です。何かご用ですか?」  旭さんが問答無用でイヤフォンの片方をあたしの耳に突っ込んできた。右耳の奥で歓声が弾ける。そのままふたりがタブレット端末の画面をあたしに向けて傾けた。  うちの高校の名前が映っている。準々決勝の試合のようだ。  現在、第一セットの半ば。相手高校がリードしている。流れも相手にあるみたいで、向こうのやけに体格のいい背番号一番が殺人級のスパイクを決めて二点連続で取った。 「準々決勝なんだよ、ピィちゃん」  旭さんが小さい子に言い聞かせるようにあたしに語りかけた。 「ここで勝てたら、ベスト4なんだ」  うちの高校はいつも三回戦か準々決勝で敗退する。ベスト4には十年以上残っていないのだという。今回の相手も同じように全国大会常連校で、実力は拮抗しているらしい。旭さんはそう切々とあたしに訴えた。  けれどもあたしは、できるだけ他人事みたいに見えるように笑ってみせた。 「そうですか。勝つといいですね」
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