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うちの高校の応援団のほうから悲鳴に近い声が上がったが、審判が何か手で合図し、うちの高校に得点が入った。二十三対二十四。逆転だ。
「ことりちゃん!」
後ろから走ってきたあやちゃんにいきなり胸ぐらを掴まれて揺さぶられた。まわりの人もあたしのことをぎろりと睨んでいる。
「サーブ直前に大声なんてマナー違反! 今のは向こうにタッチネットがあったからよかったものの、次やったら締め殺すからね!」
「ご、ごめんなさい……」
あやちゃんがあたしのことを放り投げるように胸ぐらから手を離した。次のサーブが始まろうとしていた。
笛が鳴り、ひと呼吸おいて真昼が助走をつけて跳ぶ。ボールはネットに引っかかりながらもすれすれで相手コートに落ち、向こうのチームの人が腹ばいになってそれを拾う。
体勢を崩されたようで、ゆるいボールがうちの高校のコートに返ってきた。
「チャンスボール!」
ボールが高く上がる。
「真鍋!」
誰かがそう呼んだときには、真昼はすでに跳ぶ準備ができていた。
コートの後方から真昼が高く跳ぶ。空中で止まっているような長い滞空時間の中で、真昼が思いっきり右手を振り抜く。ボールは相手コートの内側に切り込むように飛んでいき、誰も反応する暇もないうちに床に叩きつけられたのだった。
長く笛が鳴る。うちの高校が勝ったのだ。
応援席から歓声と割れんばかりの拍手が沸き起こった。
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