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「後から来たことりちゃんが真昼くんを奮い立たせるなんて、やっぱむちゃくちゃだよ」
あやちゃんがあたしの背中をバシーンと叩いた。口調こそ明るかったものの、その目には涙が滲んでいた。
「知ってた? バレーってボールを持って掴んだらダメなんだよ。真昼くんの心をボールみたいにがっちり掴んでるって約束したけど、わたしはやっぱりバレー部だからさ、できないよ」
「あやちゃん……」
「ふたりお似合いだよ、バカ同士」
その声が震えていることに気づいて、あたしは突然自分のしたことが恐ろしくなってきた。
あやちゃんを傷つけ、バイトの規則を破り、雇い主であるお母様に歯向かい、お父さんを生活の危機にさらし、旭さんと夕仁くんに心配をかけ、この大きな体育館でとんでもないマナー違反をおかした。
すべては、真昼が好きで、頑張っている彼を見てカッとなってしまったという理由からだ。
もし今日一日をやり直せるのなら絶対にこうはならないだろう。だって今、めちゃくちゃ後悔している。
恥ずかしくてたまらず、あたしは応援席のフロアを飛び出した。
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