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バカみたいに広い体育館内をしばしさまよってから、ようやく会場を出ることができた。
会場前に一面に広がるグレータイルの道を駆け出そうとすると、
「ピィ子!」
まわりの人たち全員がこちらを見るような大声で呼び止められた。
振り返った瞬間、熱い塊があたしの体を押しつぶすような勢いで抱きついてきた。危うく固いタイルの上にひっくり返りそうになるがどうにか踏ん張ってこらえる。
その塊――真昼は、あたしの肩に顔をうずめた。
「さっき頑張れって聞こえたの幻聴かと思ったけど、やっぱりピィ子だった」
「公衆の面前なんですけど!」
あたしは腕を突っ張って真昼を押し返そうとしたが、彼はぐんにゃりとあたしに体重を預けてくるばかりで離れていかない。あたしはようやく真昼が発熱していることを思い出した。
「ほら、みんなのとこ帰りなよ。タオルとかスポドリとかゼリーとか薬とか、必要なものいっぱいあるでしょ」
「いい。いらない」
「いらないって、あのねぇ」
「今は、お前以外何もいらない」
あたしはグッと言葉に詰まる。そういうことを言うところがずるいんだ。あたしは諦めて真昼を抱きしめ返した。
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