閉幕 今日もマジで解雇な5秒前

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「ピィ子!」  後ろからいきなりヘッドロックのように首に腕を回されて、息が詰まった。 「なんで顔赤くしてんだよ。お前らいったいピィ子に何を言ったんだ」  ふたりはやれやれと肩をすくめた。 「はあ。まったく世話焼けるね。僕たちにどんな甘いセリフを囁かれちゃったのかなんて、直接本人に聞けばいいのに。参考にしてもいいよ? 使用料とるけど」 「ピィちゃん、真昼に飽きたらいつでもおれに心変わりしてね~」 「ふざけんな! あ、おいピィ子」  あたしは真昼の腕をふりほどき、仲良く喧嘩している三人をおいてその場から歩き出した。真昼があとを追ってきて、あたしの隣に並ぶ。 「真昼」 「なんだよ」 「あたしは明日教室でひとりでお弁当を食べる予定。真昼が勝手にその隣で食べる分には一緒に食べてることにならないと思うんだけど、どうかな?」  不機嫌そうだった真昼が目を見開き、一瞬にして笑顔になった。  モテるくせに、よりによってあたしを追いかけまわしている真昼はバカだ。でも一円の得にもならないのにこんな愛に夢見ているあたしはもっとバカなのだろう。  窓の外で木にとまっていた小鳥が二羽連れだって飛んでいく。あたしはちょっぴり勇気を出して、半歩分、真昼に近づいた。  五秒後に真昼がどんな反応をするか、楽しみにしながら。 (終)
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