開幕 うわさの三兄弟

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***  断る断る断る断る断る、断固、断る!  真鍋家のリビングで、散らばっている衣類を洗濯機で洗えるものと洗えないものに分類しながら、あたしは旭さんへの呪詛の言葉を唱えていた。  サイズからしておそらく旭さんのものであろうシャツは、すべて袖がくしゃくしゃになって脱ぎ捨てられていた。いったいなんなのだ。うちのお父さんもそうだが、男の人は袖をくしゃくしゃにしないとシャツを脱げない呪いでもかけられているのか。まあ仕事だからちゃんとやりますけど。  ちなみに旭さんはもう神戸に行ってしまったので家には不在、真鍋くんは部活でまだ学校におり、夕仁くんは掃除の間は二階の自室に避難してもらっている。 「断る断る断る断る断る、断固、断る!」  全部まとめてドラム式の洗濯機にぶちこんで、洗濯開始のスイッチを強く押しこんだ。  まずはこのゴミ屋敷を人間の住めるレベルにまで片付けなければならない。あたしはとても忙しい。再びリビングに舞い戻って、今度はゴミと格闘する。  あの三兄弟、自分たちにとっていらないものはすべて燃えるゴミだと思っているようだ。ビンも缶もペットボトルもまとめて燃えるゴミの袋に入っているので、全部分類し直しだった。  コツコツと分類していると、夕仁くんがリビングに入ってきた。
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