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「ちょっ、真鍋くん、そういうのほんと困る。あたし、雇用契約で三兄弟とは交際禁止だからこのままじゃ解雇だって。マジで解雇な五秒前だって!」
「おえっ」
おえっ?
耳慣れないひきつった声と同時に、肩に生暖かい感触が広がった。
壊れた機械人形のように首がぐぎぎと動き、あたしの右肩が視界に入る。乳白色のドロドロとしたものがあたしのブラウスの肩にべったりとついている。受け止めきれなかったものがこぼれ落ちてせっかくきれいに拭いた床を汚した。
真鍋くんはというと、青白い顔をして口元を押さえている。
「さっき学校の保健室で測ったら熱が三十七度あって、今日は部活早退してきたんだ」
その声はかすれていた。
「すまんトイレ!」
真鍋くんはあたしを押しのけるとハードル選手よろしく廊下のゴミの山を越えていった。
あたしはその場に呆然と立ちつくす。
告白されるわゲロ吐かれるわ、散々な初出勤だ……。
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