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『真昼はよく熱を出すんだ。ベッドに転がしておけば一晩で治るから大丈夫だよ。よくあることだから本人も慣れてるし、ピィちゃんは気にせず仕事が終わったら帰っていいからね』
「本当ですか?」
『ホントホント。もう高二なんだから、それくらいの熱、どうってことないって』
旭さんのあっけらかんとした口調に、焦って空回りしていた心が落ち着いていく。確かに逆の立場だったらあたしは布団をかぶっておとなしく寝ているはずだ。
こんなのただの夏風邪で、誰の助けもいらない。だとすれば、あたしはあたしのやるべきことをするだけだ。
電話を切り、風邪薬や氷枕があることを確認して、キッチンでお粥を作った。
それらを持って真鍋くんの部屋に戻る。部屋に真鍋くんの姿は見当たらなかったが、毛布をかぶった丸い塊がベッドの上に転がっている。看病セットをセッティングしてからあたしはその塊に向かって声をかけた。
「真鍋くん、必要そうなものは全部枕元においとくね」
うーっという唸り声だけが返ってくる。
「じゃあ、あたしは時間だから帰ります。お大事に」
唸り声がやむ。毛布の中から鋭く手が出てきたかと思うと、あたしの右手首をぎゅっと掴んだ。その手はぎょっとするほど熱い。
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