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その日から、あたしは真昼に嫌がらせされるようになった。
教室に入ってきて自分の席に向かうとき、真昼は、必ず日に一度は遠回りしてあたしの机の脇を通っていく。時には明らかにわざとよろけて机にぶつかってくる。この真昼という呼び方も、ヤツに強制されたものだ。
昼休み、あたしがいつものようにあやちゃんと机を囲んでいると、ヤツがあたしの机の脇に丸めたティッシュを落としていった。
「真鍋くん、ゴミ落とした」
声をかけた瞬間、ヤツはそれを待っていたかのように振り返った。その視線は睨んだ相手を傷だらけにしそうなくらい鋭く尖っていた。
「真鍋って呼ぶな!」
真鍋くんのことを真鍋くんと呼んで何が悪いのだ。あまりに理不尽な怒りだったのであたしもキレ返した。
「じゃあなんて呼べばいいわけ? 吉野くん? 田中くん? 好きな苗字で呼んであげるけど」
「フツーに名前で呼べばいいだろ。だいたい、俺だけ『真鍋くん』なのはおかしい。あいつらのことは下の名前で呼んでるくせに」
あいつらというのは、旭さんと夕仁くんのことだろう。
それは最初にヤツのことを真鍋くんと呼んでいたため、あとから知り合ったふたりを区別のために下の名前で呼ぶようになっただけだ。他意はない。そう説明したのにわかってくれなかった。
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