124人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょうどコロッケが揚がる頃、事務所に用事があるから少し遅くなると言っていた夕仁くんが帰ってきたので、部屋にこもっていた旭さんを呼んで夕飯にした。
いただきまーすとお行儀よく手を合わせる三人を横目にあたしはエプロンを外してソファの背にかける。
「あれ、ピィちゃんもう帰っちゃう?」
「いえ、洗い物してから帰りますよ。でも食器用洗剤がないみたいなので、皆さんが食べ終わるまでにちょっと買ってきちゃいます」
「さっき帰ってきたとき、外、雨降りそうでしたよ」
夕仁くんが窓の外に目をやる。外はすっかり暗くなっていて曇っているのか晴れているのか一目ではわからなかったが、少なくともまだ雨は降ってなさそうだ。
傘を貸してくれるという夕仁くんの申し出を丁重に断り、お財布とスマホだけ持って住宅街の坂の下にあるスーパーに向かった。
食器用洗剤と安くなっていたじゃがいもをいくつか買ってスーパーから出ると、真っ先に水たまりが目に入った。
スーパーからもれる明かりや車のヘッドライトを反射して、濡れた路面は夜空のかわりみたいにきらめいている。夕仁くんの言った通り雨が降り始めていたのだ。
傘を持ってくればよかったなぁと後悔したが、まだ小雨なので走って帰ればそれほど濡れることもないだろう。よーいドン、と心の中で唱えて一歩踏み出す。
その瞬間、首がしまった。
最初のコメントを投稿しよう!