123人が本棚に入れています
本棚に追加
真昼に嫌がらせの気持ちがないのはどうやら本当のことらしい。でも、そうじゃないならなおさらわからない。真昼はどうしてこんなことをするのだろう。
「風邪が治っても、ピィ子の顔を見るたびに胸がモヤモヤする。どうして一晩中つきっきりで看病してくれたんだろうってそればかり考えてたんだ」
いきなり何を言い出すんだ、この人は。
「そして俺は納得のいく答えを見つけた」
「そのこころは?」
「ピィ子は俺に惚れてるに違いない」
「いいえ、違います」
きっぱり否定したつもりだったが、真昼は訳知り顔でポンポンとあたしの肩を叩いた。
「いいよ照れなくたって。俺もピィ子のこと好きだから」
これにはさすがに驚かずにはいられなかった。
「ハァ!? 何がどうなるとそうなるわけ!?」
「あの夜のことは記憶があやふやだけど、ピィ子の手が温かかったことだけはぼんやりと覚えてる。そうやって一晩中看病されたら好きになるだろ、フツー」
真昼が少しかがんで目線の高さを合わせてくる。いつも不機嫌そうだから気づかなかったが、旭さんや夕仁くんと同じ、透き通ったきれいな瞳をしていた。
「ピィ子、俺と付き合えよ」
あたしは濡れた地面にがっくりと膝をついた。
ブルータス、お前もか。お前もあたしを裏切るのか。
最初のコメントを投稿しよう!