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「ええっと、真昼もピィちゃんに『付き合って』って言ったの?」
「なんだよ旭、真昼『も』って」
「もしかして旭兄さんと真昼兄さんもピィ先輩に交際を申しこんだの?」
「その口ぶりだと夕仁もそうみたいだね……」
三人がいっせいにあたしを見る。代表して真昼が一歩、ずいっと前に出た。
「さっさとこいつらに言ってやれよピィ子、俺を選ぶって」
「誰も選びません!」
あたしはタオルを頭から外して宣言した。
「あたし、三人の誰とも付き合うつもりありませんから」
旭さんがソファから立ち上がってあたしの隣まで歩いてくる。
「交際禁止を気にしてるの? 父さんも母さんも遠くにいるんだからバレないよ。バレてクビになることも多々あるけど、その時はその時。むしろそういう状況のほうが愛が燃えない?」
「そうですよ、ピィ先輩。そんな恋も人生経験ってやつです」
夕仁くんも頷いた。
つまり、三人にとって、交際したら即解雇なんていう決まりは単なるスリルでしかないのだ。そして得てしてスリルのあるお付き合いというものは楽しいものだ。でもあたしは違う。あたしには、生活がかかっている。
「愛だの恋だのくだらない」
あたしは思いっきり吐き捨てた。
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