開幕 うわさの三兄弟

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「一円の得にもならないそんなものよりお金のほうが百倍大事! 愛なんかで飯は食えないんだから!」  すると、それまでずっと黙っていた真昼が突然何かに思い至ったように手を叩いた。 「つまり、俺に惚れてるけどクビになりたくないから好きって言えないってことか?」 「なにそのポジティブ思考。あんたのこと別に好きじゃないって言ってるでしょ」  真昼がふっと微笑んで胸を張る。 「そっちがその気なら別にいいよ。付き合うって絶対に言わせてみせるから」 「そのバトル、面白そうだしおれも乗っちゃおうかな~」  あたしと真昼の顔を順番に見て旭さんがニヤッと笑った。続いて、夕仁くんも挙手する。 「ぼ、僕も乗ります。一番年下だけど、僕だけのけものにしないでくださいっ」  ああもう、この三兄弟、本当に人の話を聞かないな。  これ以上否定したって無意味だと判断し、あたしは三人に向かって人差し指を突きつけた。 「やってみなさいよ。あたしは絶対にあんたたちと付き合ったりしないんだから!」  ――こうして、解雇がかかったあたしと三兄弟の恋愛バトルは始まったのだった。
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