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走るのは真昼のほうが速いが、昼休みの混雑した廊下をすりぬけるのはあたしのほうがうまいようだ。「廊下を走らない!」と怒鳴る風紀委員を追い抜き、渡り廊下を渡って隣の特別棟を経由し、一階まで駆け下りた。
昇降口の前で立ち止まってあたしは耳をすます。真昼の声も足音も聞こえない。どうやら、うまくまけたようだ。
背後を確認しながら後ろ向きに歩いていると、かかとが何かにつまずいた。派手に転んで尻餅をつく。
「いたたた」
お尻をおさえながら足元を見たら、誰かが足を伸ばしていた。
顔を上げると、お嬢様っぽい女子三人組が腕を組んで冷たい目でこちらを見下ろしていた。いつも真昼を取り囲んでいる同じクラスの女の子たちだ。
名前は確か、一川さんと二科さんと三好さん。どうやらあたしはこの子たちに足を引っかけられたらしい。
「高橋さん、わたしたち、あなたに話があるんだけどちょっといいかしら」
いいですよともダメですよとも言う前に、リーダーらしき一川さんの後ろに控えていた二科さんと三好さんがあたしの両脇にまわりこんで、がっちりと腕を絡ませてくる。
あたしを引きずるようにして、三人はそのまま昇降口脇の掃き出し窓から中庭に出た。
これってもしかして、昔の少女漫画でよく見る「呼び出し」ってやつだろうか。
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