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中庭の、木の陰になって職員室からは見えない絶妙なところに放り出され、あたしはそこにあった生垣に突っ込んだ。緑色の尖った葉っぱが頬に刺さってチクチクと痛い。
「このところ真昼さまは随分あなたに話しかけているみたいね。どうやって取り入ったの? 言っちゃ悪いけど、顔も微妙だし、スタイルも貧相なくせに」
そう言う一川さんのブラウスの胸元はボタンがはち切れんばかりにふくらんでいる。
「顔は確かに微妙だけど、ひっ、貧相は余計なお世話です!」
「このわたしですら不採用だった真鍋家の家政婦に、どんなコネでなったっていうわけ?」
「別にコネなんかないです」
「アルバイトばかりしているって噂だし、苦労話して同情でも買ったんじゃない?」
とりまきの三好さんがそう言うと、三人は粘っこい笑い声をあげる。
人に好かれたってバイト代が出るわけじゃないのだから、学園中の女子に目をつけられようと気にしなければいい。そう思っていたのについカッとなった。
あたしはブレザーをパァンと叩く。べたべたとへばりついてくるような彼女たちの笑い声を土埃と一緒に払い落とし、三人を正面から見つめた。
「コネなのか同情なのか気になるなら本人に直接聞けばいいじゃん。あいつの人間関係に口出しできるほどの関係性なら、こんなところであたしにくだを巻いてる必要ないんじゃないの?」
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