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やっちまった、と後悔してももう遅い。彼女たちの反感を買わないようにしおらしくしていれば数分ですむ呼び出しなのに、どうしてあたしはいつも言い返してしまうのだろう。
「なんですって!」
一川さんが顔を真っ赤にして右手を振り上げる。
ぶたれる!
咄嗟に目をつむったが、予想していた痛みはやってこない。
おそるおそる目をあけると、一川さんは手を振り上げたまま固まっていた。背後に真昼が立っていて、その右手首を掴んでいたのだ。
「何やってんだ、お前ら」
「真昼さまっ」
一川さんが真昼の手を振り払ってうつむく。しかし、真昼は事態が飲みこめていないかのようにきょとんと目を丸くしている。
「もしかして……」
「真昼さま、違うんです、これはっ」
「ピィ子の友達か? 話してるところ割りこんで悪いな」
あたしはズッコケて生垣に突っ伏した。
どこからどう見ても三対一の陰湿な呼び出しの現場でしょうが。お前の目は節穴か!
しかしこれ幸いと三人は顔を見合わせ、それから両手を組んで体をくねらせた。
「そうなんですぅ~。ね、高橋さん?」
「あーはいはいそうですね」
もう否定する気力も起こらない。
すると、珍しいことに、いつも仏頂面の真昼が彼女たちに愛想よく笑いかけた。
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