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「何が正しい『好き』なの?」
もしあたしのママにそう聞いたら、ママはきっとこう答えると思う。
「考えるだけ無駄よ。そんなものじゃ飯は食えないわ」
って。
ママは強烈な人だった。あたしが七歳のときに出て行ったから思い出はあまり多くないけれど、その七年間にあたしの中にいくつかの言葉を刻みこんでいった。
たとえば、「いいことも悪いことも相手に十倍返ししなさい」とか「愛なんかで飯は食えない」とか。
「毒をもって毒を制すのよ」
それもママの口癖のひとつだ。寝物語でママはよくその話をした。
あたしのママは昔、友達の間で「必殺仕事人」と呼ばれていたらしい。彼氏に浮気された子はみんなママに相談しにきて、そうしたらママは彼氏の浮気相手から彼氏を寝取り、あげくの果てにはこっぴどくフってしまうのだという。それが毒をもって毒を制すということらしい。
今思えば、幼い娘になんていう下世話な話をしてるんだとか、それってただ単に性的に奔放なだけではないかとか、いろいろとツッコミどころは多い。
しかしママの言うとおり、世の中には毒が必要な瞬間もある。たとえば今がそれだ。
ふわふわしていてつかみどころのない旭さん、あたしにすごいと言わせるためだけに生徒会から屋上の鍵をカツアゲする真昼、気弱に見えて実は食えない夕仁くん――常識が通用しないあの三兄弟から逃げ切ろうと思うなら、まともな手段ではまず無理だろう。今日の真昼の一件でそれがよくわかった。
ならばやつらと対抗できるくらいの強烈な毒を持ってくるしかない。
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