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あたしは自分の知りうる中で最もサイテーな女、すなわちママを演じることにした。それで彼らを幻滅させてあたしのことを嫌いになってもらうのだ。
善は急げである。あたしはエプロンのポケットに設定資料のカンニングペーパーを仕込んで家政婦のアルバイトに出勤した。
玄関の壁には三兄弟のその日の予定が記されたホワイトボードが下げられている。
それによると、旭さんが家で将棋の研究、真昼が体育館点検のため部活早帰り、夕仁くんはお仕事で夜遅くまで不在……つまり、家には旭さんと真昼がいるようだ。これは都合がいい。
あたしはいつも通り掃除や洗濯をして機会をうかがった。
そして、夕食前についに『その時』が訪れた。
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