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あたしはブラジルの皆さんまで届くくらいの大声で謝罪したい気持ちでいっぱいだった。
顔は中の下、スタイルは下の下、おまけにボンビーなあたしが学園の王子様の旭さんに「二番目の男にしてあげる」だなんてどの口が言うのだ!
しかしぐっとこらえる。毒を食らわば皿まで。最後までとことんサイテーな女を演じきらなければこのふたりとの恋愛バトルには勝てない。
「へぇ。本命の彼はどんな人なの?」
旭さんが頬杖をついて尋ねてくる。
あたしは今日の放課後に暗記した設定資料を頭に思い浮かべた。英単語の小テストより必死になって覚えたのですらすらと言葉が出てくる。
「身長百八十センチ前後の細マッチョ。右利きで血液型はB型。適度にスポーツをたしなむ好青年です。くせっ毛の黒髪に目は少々切れ長で初対面ではきつい印象を与えるものの、本来は知的で穏やかな性格。お人好しすぎるのが玉に瑕だけどそこが愛おしく、くしゃっとした笑顔に母性本能を感じさせる同い年の高校二年生です」
「俺じゃないか」
真昼がヨガマットに膝をつき、心臓のあたりを押さえる。
……知的で穏やかな性格でお人好しだって言ったのが聞こえなかったのだろうか。
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