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「ピィちゃんはその人のことが好きなんだね」
「はい。もうその人しか考えられません。だから旭さんとは肉体だけの関係になってしまいます。それでもよければ、つ、つ、付き合ってあげてもいいです」
それを聞いて、旭さんは「そっかあ」と吐息のように呟いた。それなら仕方ないね、という言葉が続きそうな諦めの「そっかあ」だ。
しかし次の瞬間、あたしは不健康なほどに白く薄いてのひらと「こんにちは」することとなった。あ、生命線、長いんですね。差し伸べられたてのひらから腕のほうに向かって視線でたどっていくと、旭さんはこれ以上ないくらい晴れやかに微笑んでいる。
「じゃあカップル成立だね。握手しよ?」
「ウェッ!?」
すっとんきょうな声が出た。
「二番目の男ですよ!? いわゆるスフレってやつですよ!?」
「ピィちゃん、一応聞くけど、スフレって何の略だかわかってる?」
「ス・ナントカ、フレンドの略です」
「ハハハ。スフレはただのメレンゲのお菓子だよ」
「のんきに笑ってる場合ですか!? 旭さん、今あたしにめちゃくちゃ失礼なこと言われてるんで……ふがっ」
いきなり顎を掴まれた。大きな音をたてて旭さんが椅子から立ち上がり、身長差が一気に逆転する。
「ピィちゃんは、ピィピィうるさいなぁ」
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