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「軽蔑した?」
「ちょっとしました」
「正直者だなぁ」
旭さんは声を上げて笑うと、残った紙のごみを人差し指の爪と中指の腹ではさんでつまみあげた。将棋の駒の持ち方だ。そのままテーブルに押しつけるようにおろす。
「そんなに深刻に考えることないんじゃない? 恋愛なんて将棋と一緒でしょ」
予想もしていなかった言葉に思わず「はぁ」と気の抜けた声が出た。
「相手の手を読んで、攻めて守って、『まいりました』って言わせたら勝ちの遊び。けっこう強いんだよ、おれ。恋愛に関しては今のところ一度も負けなしなんだ」
「将棋はどうだか知りませんけど、恋愛は『まいりました』で終わりではないですよ。両思いになって付き合ってからのほうが長いじゃないですか」
旭さんがあまりピンときていないような顔で曖昧に頷いた。
「そうかぁ、ピィちゃんは哲学者だね」
なんだか馬鹿にされている気がする。
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