第1ラウンド VS旭

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 なーんて思っていたのも束の間。  夏休みに入ってしばらく経った八月のある日、旭さんに頼まれて朝早くに出勤すると、黄色いエプロンの旭さんと青いエプロンの夕仁くんが玄関で出迎えてくれた。ふたりとも妙にニコニコしている。  玄関には靴が二足しかない。黒い革靴が旭さん、白いコンバースのスニーカーが夕仁くんのものだ。この三兄弟には靴箱に靴をしまうという習慣がないので、おそらく真昼は家にいないということなのだろう。 「あの、どうかしたんですか?」  あたしの質問に、ふたりは玄関の壁にかかったホワイトボードを見やった。  旭さんと夕仁くんの予定欄は空白で、真ん中の真昼の欄だけ、みみずがのたくったような字で何やら書いてある。しかし字が汚くて読めない。 「真昼はインターハイだよ」  ホワイトボードに顔を近づけてあたしが首をかしげていると、旭さんが言った。  そういえばあやちゃんが、真昼はインターハイでレギュラーとして出場するだろうと言っていたっけ。 「けっこう勝ち進んでてて、今日は三回戦なんです。僕と旭兄さんの休みも珍しくかぶったことだし、ピィ先輩も誘ってみんなでお弁当作って応援に行こうってことになったんですよ」 「あたし、何も聞いてないんですけど……」 「言ったら来てくれないだろうからピィちゃんには黙っててって真昼から口止めされてたんだ」  謀ったな、真鍋真昼!
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