第1ラウンド VS旭

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 ふたりは入念にお弁当を作る計画を立てていたようだ。キッチンカウンターの上には料理本とお弁当のメニュー一覧が書かれたメモが置かれている。  おにぎり、唐揚げ、卵焼き、ウインナー……取り立てて難しいものはない。ちょっと茶色すぎる気もするが、そこはミニトマトやレタスをつけて調整すれば問題ないだろう。  冷蔵庫を見たところ、材料もちゃんと用意されていた(夕仁くんが言ったとおり卵の量はかなり減っていたが)。  エプロンをつけながらあたしはため息をついた。お弁当づくりくらいは手伝ったほうがいいかもしれない。 「それではピィちゃん先生、よろしくお願いします」 「お願いします!」  旭さんと夕仁くんが背筋をピンと伸ばして敬礼する。その姿はさながらイケメン料理研究家のように自信に満ち溢れている。  ぼけーっと遠くを見つめながら飛車をかじっている人や、のめりこんでいた一人芝居から我に返って逃げ出していく人と同一人物にはとうてい見えない。やる気だけはあるようだ。
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