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料理初心者にいきなり揚げ物は難しいと思ったので、まずは卵焼きの指導から始めることにした。
「卵焼き、作ろうとしてもいつも焦がしちゃうんだよねぇ」
卵を割りながら、旭さんが憂鬱そうにため息をついた。
「あたしも慣れるまではよく焦がしました。でもそれが手作りの味ってもんですよ」
「いや、焦がしちゃうのは卵じゃなくて、天井」
「天井!?」
あたしはおそるおそる天井を見上げる。
そこには顔があった。
否、天井一面に顔のような模様の焼け焦げが広がっていた。その爛れた顔が今にも泣きながら「もう旭さんに火を使わせるな」と懇願してくるかのようだ。
「一時間以内に終わらせるんで、おとなしく待っててくださいね!」
あたしはぶーぶーと文句を言うふたりの背中を押してキッチンから追い出した。
この人たちに料理なんかやらせたら、お弁当を作るのに家ひとつ燃やすくらいじゃ足りないかもしれない。
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