第1ラウンド VS旭

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 その後、宣言通りあたしは一時間で豪華な三段弁当を作りあげた。 「じゃあ行ってらっしゃい! あたしはいつも通り仕事をするので!」  そう主張したのだが、あたしより何倍も頭の回転が速いプロ棋士の旭さんに言葉の交渉で勝つことはできなかった(こぶし有りだったら勝てたかもしれない)。  なんやかんやと丸めこまれ、気づいたらあたしはふたりと一緒に隣の県に向かう電車に乗っていた。  インターハイの男子バレーの会場は、運動公園にある体育館だ。メインアリーナと呼ばれる大きい体育館にサブアリーナと呼ばれる小さい体育館が併設されている。サブとはいってもそれだけで学校の体育館より大きい。  うちの高校の三回戦は、このサブアリーナのコートで行われるらしかった。  サブアリーナの二階の応援席にはけっこうな人数が集まっていた。うちの高校の応援部の人たちが固まって声だしをしているのが見える。  その中にはこの前あたしを呼び出した一川さんたち三人組もいて、「真昼・命」と書かれた小っ恥ずかしいハッピを着ていた。男子バレー部がそれだけ期待されていることが伝わってくる。
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