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聞き覚えのある柔らかい声に顔を上げると、あやちゃんが心配そうに眉をひそめていた。しゃがみこみ、あたしの肩や腕をポンポンと叩いて埃を払ってくれる。
「あやちゃん! 来てたんだ!」
「うん、女バレはインターハイ出られなかったから、真昼くんの――ううん、男バレの応援に。ことりちゃんは?」
「見ての通り、家政婦の仕事」
あたしは女バレの女の子たちに囲まれるふたりを見やった。
旭さんはまんざらでもなさそうにしており、夕仁くんは一挙一動すべてに「夕仁さまかわいい~!」と叫ばれてすっかり怯えきっている。
「旭さま、夕仁さま、よかったらわたしたちと一緒に応援しませんか?」
「いいよ。でもピィちゃんも一緒でもいいかな」
旭さんがそう答えると、女子たちの視線が初めてあたしに向けられた。全員、ハイライトのない暗い目をしている。お呼びでないのは明らかだ。
「あたし、あやちゃんと一緒にいるんでごゆっくりどうぞ」
両手を合わせてゴメンのジェスチャーをすると、あやちゃんはにっこり笑って頷いた。
「じゃあみんなごめん、試合後にまた合流しようね」
コートには選手たちが出てきていた。もうすぐ試合が始まるようだ。
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