123人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしとあやちゃんは旭さんたちから少し離れた席に移動した。
その席はコートを横側から眺める位置にあり、むかってネットの右側でうちの高校の選手たちが準備をしているのがよく見えた。
「背番号五番が真昼くんだよ。今日も絶好調だね。動きがキレキレだ」
あやちゃんが小声でそっと教えてくれた。真昼はいつになく真剣な顔で腕の筋肉をのばしている。二、三度ジャンプしたその動きは軽やかだ。
選手たちが整列して挨拶し、試合が始まった。
バレーボールのルールに関して、あたしは、「地面にボールを落としてしまったら相手に得点が入る」程度の知識しか持ち合わせていない。けれども、早い段階でそれを察したあやちゃんがところどころで解説を入れてくれたのでちっとも退屈しなかった。
どうやら、真昼はウィングスパイカーという攻撃の中心になるポジションらしい。
相手がサーブをうち、うちの高校の選手がそれを拾った。回転を殺してゆるく上がったボールはネット際の選手の手元に吸いこまれるように飛んでいき、彼がそれを真昼に向かってパスする。
いつの間に助走していたのか、その時にはすでに真昼の足は体育館の床から離れていた。
真昼が高く跳ぶ。
頭のてっぺんより上の位置にあるネットから真昼のクリームパンみたいに大きな手が出た。てのひらがボールに触れる。でもまだ真昼は地面に落ちない。羽が生えているみたいな滞空時間だ。真昼の一挙一動がスローモーションのようによく見えた。
あっという間にボールは相手コートに叩きつけられる。
最初のコメントを投稿しよう!