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「よっ、真昼! サブアリーナまでの道わかる?」
「旭さんちょっと」
真昼はたった今あたしたちの存在に気づいたようで目を丸くする。てっきり不機嫌かと思っていたが、先ほどの怒りはどこへやら、真昼はあたしたちを見るとぺかーっと笑った。
「ピィ子、来てくれたのか」
「弁当も持ってきたよ。おれたちがふがいないばかりに全部ピィちゃんに作ってもらったんだ」
「愛妻弁当……!」
いつもだったら「愛妻じゃないっつーの」とツッコむところだが、かわりにあたしは真正面から真昼を見上げた。
「あのさぁ、いくらなんでもさっきのは言い過ぎじゃない?」
「俺よりレシーブが下手くそなリベロならバレーに向いてない。春高前に辞めればいいんだ」
真昼の口調には怒りも蔑みもなく、ただたださらっとしていた。まるで「用事があるなら早起きすればいい」とか「お腹がすいたならご飯を食べればいい」といったごく普通の提言を口にしたかのようだ。
あたしは思わず固まる。とても残酷な響きに聞こえたから。
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