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「あたしはスポーツのことはわかんないけど、でもあんなふうに責めることないじゃない。好きでうまくいかなかったわけじゃないんだし」
「でも狙われていたのが俺だったら、絶対に臆さなかった。最後、途中でボールを追いかけるのを諦めたりしなかった」
真昼は先輩が去っていったほうに視線をやった。鼻と顎がツンと尖ったきれいな横顔からは何の感情もうかがえない。
「あの人だけじゃない。セッターもミドルブロッカーもみんなつまらないプレーばかり。俺は下手くそは嫌いだ。もし俺が六人いるチームだったなら今日だって負けなかったはずだ」
真昼はそれだけ言うとまた元の能天気な笑顔に戻ってあたしの手を取った。
「そんなことはどうでもいいだろ。一緒に弁当食おう」
「どうでもよくないっつーの!」
あたしは思いっきり真昼の手を振り払った。
真昼は確かにバレーがとてもうまいのかもしれない。こんなに傲慢でもチームメイトたちから腫れもの扱いされていても、大事な大会でチームの中心として活躍しているのだから。でも。
「真昼がどれだけ下手くそを嫌ってるのか知らないけど、あたしはあんたのそういう自己中なところが嫌い」
気づいたらそう口にしていた。
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