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「人にバレー向いてないっていうけど、あんたのほうがよっぽどチーム競技に向いてないよ。そんな考えだと、いつかほんとにひとりでバレーすることになっちゃう」
あたしが振り払った真昼の手が、ぐっと握りこまれる。
「ピィ子は俺のことわかってくれると思ってたんだけど」
「わかるわけないでしょ」
「……わかってくれないなら、決別だ」
「ちょっと待って。決別って」
今まで黙って隣で聞いていた旭さんがあたふたしながらあたしたちの間に割って入ってきた。しかし真昼は旭さんのことなど視界に入っていないかのように続ける。
「俺はもうお前のこと好きなのやめる。両思いじゃなくなるけどいいのかよ」
「望むところよ」
「本当にいいのか」
「いいけど?」
真昼がぐうっと言葉に詰まり、苦し紛れに指を突きつけてきた。
「お前なんかお前なんかっ……菓子つけて返す!」
これには旭さんがズッコケた。
「熨斗って言いたいのかな」
知ったことか。海苔だろうがジャムだろうが好きなものをつけて返せばいい。
「こっちだってあんたに嫌われてせいせいするっつーの!」
あたしは真昼とは正反対の方向に向かって歩き始めた。
耳の奥がかっかと熱く、そこに心臓があるみたいに鼓動が間近に聞こえる。
バカだった、とあたしは思った。
応援にきたことがバカだった。活躍している真昼をちょっとでもかっこいいと思ったことがバカだった。そして何より、真昼にお節介なことを言ってしまったのが一番バカだった。
この恋愛バトルから解放されるために、あたしは真昼に幻滅されたかった。それが叶って万々歳なはずなのに、なぜだかすごくモヤモヤしていた。
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