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許可を得て玄関のドアを開けると、真っ先に見慣れない運動靴が目に入った。デザインからして女性物なのでおそらく先ほどの声の人のものだろう。
中に入るのをためらっていると、リビングのドアが勢いよく開かれた。出てきたのは四十代後半くらいの女の人だった。
圧倒されて、咄嗟に挨拶の言葉が出てこない。
彼女の身長は日本人男性の平均以上あり、細身であるものの腕にも脚にもしっかりと筋肉がついている。しかし、その見かけ以上に何か他人に有無を言わせないオーラがあった。
「旭から聞いてはいたけど、同じ学校の女の子って本当だったのね。何歳なの?」
鋭くてよく通る声だ。まるで学校の体育の先生みたい。「若すぎるんじゃない? 任せて大丈夫なの?」と暗に責められているようで、思わず背筋が伸びた。
「ご兄弟と同じ高校の二年生で、十七歳です! 高橋ことりです! ひゃじめましてっ!」
力を入れすぎて声が裏返る。
それを聞いた彼女は、その厳しそうに見える顔をふにゃっと崩して優しく笑った。
「やだ、緊張しないでいいのよ。こちらこそはじめまして。三兄弟の母親です」
「おっお母様!?」
あたしは思わず三兄弟のお母様だと名乗るその女性をまじまじと見てしまった。
確かに、優しい笑顔は旭さん、まっすぐな背筋は真昼、柔らかい物腰は夕仁くんに似ている。
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