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「私、あなたに会ったらお礼が言いたかったの。この子たちで家政婦なしで二週間も暮らしていたらそりゃひどい有様だったでしょう?」
あたしは来たばかりの頃のゴミ屋敷を思い浮かべて苦笑いした。
「旭から同じ学校の子を家政婦として雇ったって聞いたときは、どうせすぐに辞めさせることになるだろうって思ってた。でも今日来てみてびっくり。シンクがピカピカなんだもの!」
少し間をあけて、お母様がウインクする。
「それに、旭とも付き合っていないみたいだしね」
「ひどいなぁ。母さんは俺のことをなんだと思ってるの」
リビングから旭さんが顔をのぞかせた。心外だというように不満げに唇を尖らせているが、その目元は笑っている。
「必殺遊び人。あんたのせいで何人の家政婦を辞めさせたことか」
「どうせ遊びなんだから付き合うのぐらい許してくれればいいのに」
「嫌よ。遊びの恋愛なんてろくなものじゃない」
あのキョーレツな三兄弟を育てたというからもっとぶっ飛んだ人を想像していたが、すごくまともな人のようだ。
「恋愛で最も大事なのは利害の一致。メリットのない相手との恋愛なんて一秒たりともする価値ないわ。あんたたちみたいに何かを極める人間なら、特に相手は選ぶべきよ」
……前言撤回。やっぱりこのお母様も三兄弟とは別のベクトルでキョーレツな人みたいだ。
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