第1ラウンド VS旭

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 旭さんの奔放な恋愛関係に釘を刺すと、お母様は再びあたしに笑顔を向けた。 「旭のこの無駄にきれいな顔に迫られても落ちないなんて、あなたは相当しっかりしたお嬢さんね。家事の腕もいいし、お給料以上の仕事をしてもらってると思ってる。どうもありがとう」 「いえいえ、そんな」  お母様はかなりサバサバした考え方をお持ちのようだが、どうやら悪い人ではなさそうだ。当初の真昼みたいに三兄弟目当てだと思われることも覚悟していたためホッとして表情が緩む。  しかし、その次にお母様が口にした一音に、あたしの背筋は凍りついた。 「で?」  細く整えられたお母様の眉がはねあがる。 「さっきからずっとドアの前にいる真昼は、いつになったら入ってくるのかしらね?」  玄関のドアが開かれ、観念したように真昼が入ってきた。その目線はお母様をさけるように壁のほうに向けられている。 「久しぶり、母さん」 「見たわよ、この前のインターハイの動画」  真昼が表情を強ばらせて黙りこむ。まるで怒られている小さな子供のように。  リビングから夕仁くんが飛び出してきた。せっかくお母様が帰ってきているのだから家族団らんをすごせばいいのに、お母様の背後を抜き足差し足で通りぬけ、そそくさと二階に上がろうとしている。  夕仁くんが旭さんにむかって両手で謎のハンドサインを送ると、旭さんがひとつ頷いた。
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