3万円とそれ相応の選択

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「えぇと、よく考えたうえで申し込んだら、受けてくれる?」  彼女の言うことはもっともな気はしたが、僕はとりあえず聞いてみた。 「そう言う時点で、もうよく考える気が無いよね。話、聞いてた?」  ……そうかもしれない。 「別に結婚自体はやぶさかではないから、本当によく考えてよ。そのうえで、きちんと話し合おうよ。あなたは短絡的で浅はかで勢いで行動するところがあるんだから、その分、しっかり考えなきゃ」 「……はい。すみませんでした」  食い下がるべきか悩んだが、とりあえず謙虚な心で引き下がった。 「……なんだか、やたらと素直だね」 「結婚するときは、謙虚になると決めている」  僕は友人達のように高圧的な態度を取るつもりは無い。結婚とは、謙虚であるべきだ。 「よろしい。じゃ、決めたら連絡して」  そう言って、彼女は電話を切った。  なんだろう。プロポーズしたのに、逆に僕が決断しなければならなくなった。なんでだろう。  僕は頭を抱える。  結婚しないとしたら、友人に見下される。  でも結婚してくれたとしても、あの感じでは、僕は彼女に一生見下されて生きねばならないのかもしれない。  つまり、どう足掻いても誰かに見下される未来が見える。  ……中々上手くいかない。  面倒ではあるが、僕は少し真剣に考えることにした。  でもまぁ、やぶさかではない、という言葉は、やっぱり少し嬉しかった。  そんな風に言ってくれるのは、この人だけなのかもしれない。 〈了〉
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