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「えぇと、よく考えたうえで申し込んだら、受けてくれる?」
彼女の言うことはもっともな気はしたが、僕はとりあえず聞いてみた。
「そう言う時点で、もうよく考える気が無いよね。話、聞いてた?」
……そうかもしれない。
「別に結婚自体はやぶさかではないから、本当によく考えてよ。そのうえで、きちんと話し合おうよ。あなたは短絡的で浅はかで勢いで行動するところがあるんだから、その分、しっかり考えなきゃ」
「……はい。すみませんでした」
食い下がるべきか悩んだが、とりあえず謙虚な心で引き下がった。
「……なんだか、やたらと素直だね」
「結婚するときは、謙虚になると決めている」
僕は友人達のように高圧的な態度を取るつもりは無い。結婚とは、謙虚であるべきだ。
「よろしい。じゃ、決めたら連絡して」
そう言って、彼女は電話を切った。
なんだろう。プロポーズしたのに、逆に僕が決断しなければならなくなった。なんでだろう。
僕は頭を抱える。
結婚しないとしたら、友人に見下される。
でも結婚してくれたとしても、あの感じでは、僕は彼女に一生見下されて生きねばならないのかもしれない。
つまり、どう足掻いても誰かに見下される未来が見える。
……中々上手くいかない。
面倒ではあるが、僕は少し真剣に考えることにした。
でもまぁ、やぶさかではない、という言葉は、やっぱり少し嬉しかった。
そんな風に言ってくれるのは、この人だけなのかもしれない。
〈了〉
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