3万円とそれ相応の選択

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 ナスヨさんは暫く沈黙したあと、返してきた。 「……急だね。あまりにも急。どうしたの?」  僕も返す。 「結果的に急な話になってしまったのは、本当に申し訳ないんだけど、結婚したいと思ったんだ」 「……こういうのはサプライズ的な演出の部類に入るのかな……」 「驚かすつもりなんて無いんだ。ただ結婚しないと、僕の気持ちの置き場が無いんだ」    結婚しないと、僕の気は晴れない。友人どもを見返してやりたい。 「急なくせに、何故だか情熱的な事を言う……」  そこまで情熱を盛ったわけではないのだけど、なんだか好意的に捉えてくれた。 「……できれば電話じゃなくて直接聞きたかった話ではあるんだけど」  彼女は言う。 「そこは申し訳なく思うよ。でも、居ても立ってもいられなくなったんだ、わかってほしい」 「いつになく情熱的なのは、まぁ評価するけど、さすがに予備動作なくプロポーズされると、心構えが無かったので戸惑うよね」  僕の情熱は伝わっているようなので、嬉しくなってきた。
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