Loose

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その後二人の行動は速かった。何しろ休暇は今日でおしまい。 あの後三人でお風呂に入ったあと、まだ戸惑う僕を連れて実家に帰った僕達は、両親に全てを打ち明けた。 最初戸惑い、驚いていた母は僕のうなじについた二重の噛み傷を見ると涙を流し、父は複雑な顔をした。当然の反応だ。実の(三つ)子がただならぬ関係、しかも世間には決して知られてはいけない関係になってしまったのだから。 でも、親はやっぱり親なのだろう。そうなることはある程度予測していたらしい。 子供たちが互いに向ける愛情と苦悩を知っていた両親は何となく、次に三人が会ってしまったらきっともう離れられなくなると思っていたらしい。 そして両親もまた、覚悟を決めてくれた。 六年ぶりに家族が揃ったこの日、僕達の絆はより一層深く、強いものとなった。 どんなことになっても、絶対にみんなを守る。 家族がそう、心に誓った日となった。 しかし話は思いのほかあっけなく方がついてしまった。 念の為行ったDNAの家族鑑定で、僕だけが他人である事が発覚したのだ。 その鑑定結果を見た僕は、本来なら悲しむべきなのだろうけど、ほっとして喜んでしまった。 兄弟じゃなかった。 その安堵感に涙が流れた。 けれどそれはそんなに単純なものではなく、ことは重大だった。 いつから他人の僕は、ここの家族になったのだろう? しかしそれは、瑠泉と瑠風がある程度予測して調べていたらしい。 公的書類になんの問題もないのに、もしも僕達に血の繋がりがなかったとしら・・・? そうなる可能性も考えていろいろ調べたのだそうだ。 僕と離れた六年間。悩みに悩んだ二人は業界で築いた人脈をフルに使って調べあげたらしい。そしてたどり着いた可能性、それは、病院での新生児取り違え。 僕たち三人が生まれたその時間、もう一人子供が生まれていた。 僕達が生まれた病院はいわゆる総合病院で、産科は数ある科の内の一つ。それほど規模が大きい訳じゃない。分娩室は二つしかなく、生まれた赤ちゃんを処置する部屋は一つしかなかった。 赤ちゃんは生まれるとその処置室で綺麗にされ、体重と身長を測り、すぐに作られたカルテのバーコードが書かれたタグを足に巻かれる。その時、ほぼ同時に生まれた僕ともう一人の赤ちゃんのタグが間違えられたのだ。 この病院では後に第二性の記載もするため、プライバシーの配慮からカルテに名前は書いていなかった。 生まれた時に間違えられたバーコードはそのまま入れ替わったままカルテ管理され、それまでの通院記録も間違ったまま記録されていたのだけど、名前が書いてないため長年その間違いに気づかれていなかったのだ。 それが第二性診断の誤診に繋がった。
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