Loose

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生まれた時から一緒だった。 もともと二卵生の双子だったのに、その一つがさらに分裂して双子になった。なので結果、僕達は三つ子としてこの世に生を受け、共に育っていった。 最初は良かった。 何も分からない僕達は犬っころのように三人じゃれ合いながら、いつも一緒だった。だけど、少しずつ大きくなるにつれて、周りの反応がわかるようになると、僕は一人だけ違うことに気づき始めた。 長男の瑠泉と次男の瑠風はもともと一卵性の双子だ。だから二人の容姿はまるで同じで、とてもかわいかった。誰もが目を引く美形ぶりで、幼い頃から人々の注目を浴びていた。その上頭も良くて運動神経も抜群。もちろん第二性診断は『アルファ』だ。 それに比べて三男の僕は見た目も普通。頭も運動も体型もみんな普通。同じ時に同じ親から生まれたのに、僕はまるで、いい所を全部二人に取られてしまってその残りカスのような存在だった。 周りの反応もみんな同じだった。 いくら三人一緒にいてもみんなの目に僕は入らない。その二人の容姿に目を奪われて、僕なんか眼中にないのだ。たとえ気づいたとしても、その目は哀れみで満ちている。なんで三つ子なのにこうも違うのかと・・・。 そんな環境でも二人は僕を見下したり蔑んだりすることなく、むしろ僕をかばって大事にしてくれた。でも僕は、二人に大事にされればされるほど僕の中の劣等感が大きくなり、いつしか二人とは行動を共にしなくなった。 同じ家の中で生活し、同じ学校に通っていたら自然と行動は同じになると思いきや、実はそうはならなかった。なぜなら瑠泉と瑠風は、その容姿から小学生の時にスカウトされ、モデルデビューをしていたからだ。 容姿の綺麗さに加え、持って生まれた人を惹きつけるオーラでその人気は瞬く間に上がり、中学生になる頃には歌手デビューも果たした。もちろん、そんな華々しい二人とは似ても似つかない僕の存在はその二人の経歴からも省かれ、二人は双子のデュオ『Loose(ルース)』としてデビューしたのだ。 幼い頃から習っていたピアノを生かして二人は自分たちで曲も作り、それはどれもトップチャート入りを果たしている。今やこの国で知らぬ者はいないくらいの人気アイドルの地位を築いていたのだ。 一方の僕は本当に普通を絵に書いたような生活をしていて、第二性の診断も思った通り『ベータ』と出たので、これでやっとあの二人と比較される地獄から開放された、と清々しい気持ちで生活を送っていた。 なぜなら、二人はすでに家から出て事務所が用意したマンションに二人で住んでいたし、経歴も伏せていたので実家はいたって平和だったのだ。 二人が歌手デビューした時に偶然父親の転勤で引越したので、近所は誰も二人を知らなかったしね。 やっと僕の平和な人生が始まる、そう思った矢先だった。
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