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明日のない、嘘つき。
飛行機の音が聞こえる。離陸する音、着陸する音、移動する音。窓から見える飛行機の数は多く、先ほどまで乗っていた飛行機がどれか、見分けがつかなくなってしまった。
「じゃあ、僕は土産を買わなければいけないので、ここで」
「はい。それではまた会社で」
早朝の空港。他人行儀な挨拶。社交辞令ほどもない愛想。重たいキャリーケースを引きながら、私はつい数時間程前まで閨を共にしていた相手に手を振った。
出張と偽った不倫旅行。彼は行ってもいない土地の土産を、愛してもいない家族の為に買う。空港の売店は本当に便利だ。嘘を吐くのにぴったり。
彼が土産を選ぶ後ろ姿を後に、私はエレベーターへと乗り込む。正直、ああいうシーンは見たくない。出来るなら、私はあの土産を受け取る側になりたい。愛がなくとも、奥さんの方になりたい。
嘘。きっと私は愛されたい。でも一瞬でもそんなことを考える辺り、きっと私はあの人を愛してはいないのだろう。なら、私は一体何を求めているのだろう。キャリーケースを引き、エレベーターを降りてバス停へと向かう道中も、その問いは頭の中をぐるぐると回る。
別に、彼のことを愛しているわけじゃない。彼に愛されてるわけじゃない。仕事上いつも一緒には居るけど、あの人の本音は見えない。身体を重ねるのだって、ただそこに居たから。そんなような気がする。今回の旅行だって旅行と言いながらも、セックス以外のことは何もしていないのだから。
外へ出るとやっぱり寒い。帰路につくための切符は買ったけど、バスが出るまでまだ小一時間あった。身体を温めるためのコーヒーでも買いに行こう。そうして私は再びキャリーケースを引く。
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